昨日、解離性同一性障害(DID)の女性の生きづらさをとてもわかりやすく描いた映画「Teamその子」の上映会に行ってきました。素晴らしい映画で、ぜひ多くの方にご覧いただきたいと思いました。
「解離性同一性障害(DID)」という言葉は聞いたことがなくても、「多重人格」という言葉は知っている方も多いのではないでしょうか。
以前は多重人格と言われ、メディアでは「別の人格が裏で何かをやっている…」といったセンセーショナルな扱いもされていましたし、都市伝説と思っている方もいるかもしれません。
しかし、現在では心の防衛反応の一つである「解離」が引き起こす症状の一つとして研究が進み、海外では学会も開かれて知識や情報の普及が進んでいます。日本ではまだ途上とされています。
解離とは
解離とは、耐えがたいほどのストレスや心的負担に襲われた時に、意識を切り離して現実から逃れるサバイバルの方法です。これは誰にでも起きる反応です。
普段の生活でも、ストレスが大きすぎるとぼーっとしたり、嫌なことがあった後に「どうやって帰ったか覚えていないけど帰れた」という経験をしたことがある方もいるかもしれません。これも解離の一つの反応です。個人差はありますが、ひどい虐待やいじめ、性暴力などを経験すると、解離の反応が強まり、別の人格に自分の部分を担ってもらって生き延びることがあります。これがかつて多重人格と呼ばれた状態で、現在は解離性同一性障害と呼ばれています。
解離性同一性障害の現状
解離性同一性障害は海外では人口の1~3%に見られるとされています。統合失調症が1%と考えると、珍しすぎるわけではありません。
日本では4人に1人の女性が配偶者からの暴力を受け、若者カップルの3組に1組で暴力が発生していること、幼少期の虐待や統計に上がらない性暴力の現状を考えると、1~3%というのは現実味のある数字です。
別の人格が生まれるまではいかなくても、私にも解離の反応がありました。子どもの頃、父親が怒鳴り始めると、頭の中でファンタジーの物語に飛び込み、現実を忘れようとしていました。怒声をまともに聞いていられず、母親が父親に一方的にやられているのを見るのは耐えがたい苦痛でした。何度もファンタジーの世界と行き来したため、現実と空想の区別がつかず混乱していた時期もありました。そのため、友達から「嘘つき」と言われることもありました。父親に怒鳴られている自分を別の自分が見ているような感覚もありました。これも解離の一つの反応だったと今になって思います。
映画「Teamその子」を拝見して
映画の内容は非常に分かりやすく、観客への配慮も行き届いていました。書籍で読むだけのDIDが映像で見ると非常に分かりやすく、DIDの方が抱える生きづらさがリアルに表現されていました。このテーマで映画を制作してくださった友塚監督には本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
DIDは言葉で伝えるのが難しく、日本では偏見も強いと感じます。そのため、映画で伝えるのは良い方法だと思います。上映会が各地で行われているということなので、もっと広まってほしいと思いました。ACOA大阪でも何かできないかと考えています。
ぜひ多くの方に、映画「Teamその子」をご覧いただきたいです。
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