前回は、なぜフラッシュバックでは今と過去の区別がつかないのか、という説明を書きました。フラッシュバックは脳が起こす防衛反応で、昔起こったことなのにまるで今起こっているかのように反応するのは脳の仕組みが影響しているという話でした。
フラッシュバックの苦しさ
私もそうですが、フラッシュバックはとてもつらいものです。二度と経験したくないような出来事がまた目の前で起こっているような感覚になって、私の場合は過呼吸を起こしたり、体がガチガチに固まって動けなくなったりします。

フラッシュバックは脳の反応なので、「昔のことだから今は大丈夫」と言われても効果的ではありません。そのため、グラウンディングという、脳を「今、ここ」に集中させることで安心と安全の感覚を取り戻す方法があります。
グラウンディングについては、以前こちらのブログに詳しく書いています。呼吸法、瞑想の方法も紹介していますので、ぜひご覧ください。
国際NGO キャパシターのグラウンディング法
今日は、最近私がよく行っているグラウンディングの一つの方法をお伝えします。
キャパシターとは
CAPACITAR(キャパシター:「エンパワーする」という意味のスペイン語)は、30年以上にわたり世界中で活動する国際NGO団体で、誰でも簡単に実践できる安全なボディワークを通じてトラウマケアを提供しています。戦争や災害の被災地など、ケアを必要とする人たちのために、シンプルで効果的な手法を教えています。その中の一つが、今回ご紹介する感情をケアするための指握り法です。
キャパシターのワークショップに参加した人は、学んだことを家族や友人、地域の人たちにも教えて広めることが推奨されています。このように知識を共有することで、より多くの人がトラウマケアの方法を学べます。私もワークショップに参加したことから、この考え方に基づいて、ここで紹介させていただきます。
指を握るグラウンディング法
キャパシターのプログラムの中に手の指を握る方法があります。手の指はそれぞれが「悲しみ」「怒り」「不安」などの感情とつながっているため、指を握ることで感情をケアする方法です。(この方法は、様々な文化の人々と長年にわたって実践され、多くの人の心と体に良い効果をもたらすことが確認されています)
人差し指を使ったグラウンディング
グラウンディングとして行う時、私のお勧めは人差し指です。キャパシターでは、人差し指は「恐怖、パニック」などの感情と関連が深いとされています。私自身、「どうしよう…」と混乱するような不安になることが多いので、日常的に取り入れています。
実践方法
まず、片方の手の人差し指を、もう片方の手で握ります。左右どちらの手でも指でも構いません。
そして、数回深呼吸をします。

これだけ?と思われるかもしれませんが、ちょっと混乱した時などに、私にはとても効果があります。少し落ち着いたり、視野が広がったりする感じがあり、ただ深呼吸だけをするよりも楽になる感じがあります。
指を握って深呼吸するだけなので、とても簡単で安全です。よかったら試してみてください。
本来の方法は親指から始めて一本ずつ握り、感情を手放していきます。ゆっくりケアできるときは、親指から握って、「もういいかな」と思うまで何回か深呼吸して、次は人差し指に移って…とやってみてください。少し気持ちが落ち着いた感じになると思います。
寝る前に気持ちがざわざわする時などもおすすめです。お子さんの場合は、自分で握っても、安心できる大人に握ってもらうのも良いそうです。※このプログラムをもっと詳しく知りたい方は、公式サイトに動画やテキストもあります(日本語版もいくつかあります)ので、ご覧になってみてください。
グラウンディングというと、難しい呼吸法や瞑想を思い浮かべるかもしれませんが、要は「今、ここ」に集中することです。指を握ると五感も使うので、簡単にグラウンディングを取り入れやすく、最近私が気に入っている方法です。
私がキャパシターのプログラムを取り入れたりご紹介したりしているのは、一人でも多くの人にトラウマケアを実践してもらえるように、という考え方に基づいているため、簡単に学べて簡単に使えるプログラムが多いからです。日本でトラウマケアというと、どうしても時間もお金もかかるイメージがありますが、もっと気軽にできればいいのにといつも思っていました。キャパシターのプログラムはトラウマケアのために開発されたプログラムですが、日常的なストレス対処や感情のケアにも役立ち、日頃から簡単に実践できるものが沢山あります。自分だけで気軽にできる、というのも利点です。
また機会があれば、他のグラウンディング方法もご紹介しますね。
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