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執筆者の写真kumada rie

なぜ完璧主義をやめられないのか(後編)

完璧主義になる理由はもう一つあります。


トラウマの特徴は、圧倒的な無力感です。子どもの頃から、目の前で起こる暴力や何をやっても怒られる現実など、「私にはこの現実を変える力はない」「私には何もできないんだ」と感じ続けます。無力感は、自尊心を完全に損ないます。


だからこそ、自分の無力を感じることが怖く、無力を感じる状況をなんとかしたいと躍起になります。無力を感じる状況が目の前にると、過去を思い出して苦しくなる(トラウマを刺激される)から。


例えば私は、数人の集団でいる時に何かトラブルが起きると、積極的に責任を取ろうとします。自分に責任がないことであっても、まるで自分が悪かったみたいに積極的に行動します。周囲には私は責任感が強い人間のように映りますが、実際は違います。私は「自分が無力である」状況が目の前にあるのが怖いから、早く解決したいだけです。恐怖に基づいた行動です。


私は混沌とした状況、自分に理解できない状況は大の苦手で、その状況自体が恐怖なのです(初めての育児なんかがこれで、とてつもなくトラウマを刺激されました)。

それほどに、子どもの頃の私は自分のことを圧倒的に無力だと感じていて、目の前の状況に絶望を感じていた、ということです。

小さい身体で、一体どれほどの絶望を日々感じていたのか、と震えるほどです。


だから、状況をコントロールすること、「支配」にこだわります。安心したいからこそ、コントロールしたり支配したりしたくなるのです。それが完璧主義を強めます。でも「安心は決して来ない」という過去の経験に基づいているので、コントロールしてもしても安心はできないのですけどね。だから余計にコントロールしようとするネガティブスパイラルです。


こんなふうに、自分の首を絞め続けるのが虐待サバイバーの完璧主義です。


虐待サバイバーの特徴である完璧主義について、私が勉強してきたことを書籍のエッセンスも交えながら書いてみました。自助グループの中でも必ず出てくるテーマだし、ここに書いている以上に複雑で根深いものもあると感じていますが。


完璧主義を薄めたり、付き合いやすくできるよう、私も日々練習したりセルフケアをしています。以前よりはマシになったなあとは感じています。


トラウマケアを、魔法のように「はいトラウマなくなりました!」とできたらいいのにと思っていたことがありました。でも、子どもの頃から何十年もかけて自分を傷付け続け、時に激しく自分をえぐったこの傷や思考習慣を簡単に変えられる方法なんかあるわけがなく、地道な地道な練習です。


サバイバーは白黒はっきりさせたがるし、完璧主義なのもあって、トラウマケアも「はいできた!」みたいなのを求めたがる人が多い傾向があると感じています(私も)。


でもそうじゃなくて、自分でコントロールなんかできないほどのトラウマを自分が抱えているのだという現実を認めるところから始まるように感じています。それほどに私は圧倒的に無力を感じる状況に置かれていたのだ、そしてそれは私が悪かったのではないと、そこをしっかり感じて認めるところからがスタートのように、感じています。



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